今回のブログは、上高地を代表する樹木のひとつ「ヤナギ」の見分け、中級編です。
梓川という暴れ川があるおかげで、たくさんのヤナギがある上高地。
初心者には見分けにくいこのグループをわかりやすいところから覚えていきましょうということで、1月17日のブログでは「ヤナギの見分け(初級編)」をお届けしました。
前回は、葉のつき方と花の形に注目して
「対生だったらイヌコリヤナギ、短い花穂が垂れ下がっていたらケショウヤナギ、長い花穂が垂れ下がっていたらオオバヤナギ」
……という3種の覚え方をご紹介しました。
さて今回登場するのは下の2種。
・ドロヤナギ(ドロノキ)
・エゾヤナギ
今度は、枝と幹に注目してみましょう。
まずはこちら、ドロヤナギから。
丸い葉っぱで、一般的なヤナギのイメージにはあまり合致しません。
じゃらじゃらと垂れ下がっているこれは実です。
前回ご紹介したとおりヤナギの種は綿毛につつまれて風に乗りますが、この写真では熟した実が割れて綿毛が少しだけ見えてきています。(完熟するともふもふの綿毛のかたまりのような見た目になります)
葉っぱだけを見るとこんな感じです。
卵型の先がとがった形で、裏側はちょっと銀色がかっています。
ヤナギの葉っぱとしては珍しい形をしていて、上高地にあるヤナギでこんなに丸い葉っぱはドロヤナギだけです。
綿毛がついていて「ヤナギだ」と分かれば、あとは「葉っぱが丸いからドロヤナギだな」と分かるのですが……葉っぱだけでは、なかなか「ヤナギだ」というところまでたどり着けません。
そんな時に手がかりになるのは、木の幹です。
ドロヤナギの幹は、こんな色合いをしています。
写真で見ると緑が強いですが、実際には「緑がかった白」という印象で、「シラカバ……?いや、それにしてはちょっとくすんでいる……」くらいの色に見えます。
ちなみにこちらが本物のシラカバ。
直径20-30㎝くらいの若いシラカバは、とても鮮やかな白色をしています。
また、ドロヤナギの幹には、ところどころに♦のような形の傷が入るのも特徴です。
「幹が白緑色の木で♦の形の傷があり、葉っぱが卵型だったらドロヤナギ」と覚えてください。
さて、続きましてはエゾヤナギ。
河童橋~小梨平エリアではおそらく一番多数派のヤナギで、見る機会は多い木です。
ヤナギらしく細長い形、光沢のある葉、ふちにある細かいぎざぎざ(鋸歯)、真ん中の葉脈(主脈)がはっきり白く見えるのも特徴です。
さて、今回は枝と幹に注目するのがテーマですので、エゾヤナギの枝を見てみましょう。
夏になると、赤い枝からろう物質が分泌されて、こんな白っぽい色になります。
この色が出るのは、上高地ではエゾヤナギと、前回ご紹介したケショウヤナギの2種だけです。
ちなみにこちらがケショウヤナギ。
同じように枝が白くなっています。
ケショウヤナギとエゾヤナギは葉の大きさがずいぶん違い、ケショウヤナギの葉は5㎝前後なのに対しエゾヤナギの葉は10㎝以上ありますので、見分けは容易です。
「枝の一部が白くなっていて、葉の長さが10㎝以上あったらエゾヤナギ」と覚えてください。
ちなみにこれはちょっと邪道ですが、エゾヤナギにはもう一つ、上高地限定で使える非常に分かりやすい見分け方があります。
それがこちら。
そう、エゾヤナギは、樹皮をサルによくかじられてしまうんです。
現在、上高地でサルがこれだけ大規模に皮をむくのはエゾヤナギだけなので、「上高地で木の皮がむかれていたら、エゾヤナギ」という見分け方もできます。
※上高地ではもう一種、「ケヤマハンノキ」という木もサルにかじられるのですが、こちらは太い枝や幹ではなく、ごく細い枝先だけをかじります。
かじられたケヤマハンノキの枝。直径は5mm程度です。
さて、これで前回の初級編と合わせ、5種のヤナギをご紹介しました。
ヤナギが5種も見分けられたら、上高地を歩くのがかなり楽しくなります。木々が芽吹いたらぜひ、実際に散策して確かめてみてください!
さくら