冬季休業中は毎週金曜更新の「上高地コラム」と題して、様々な読み物をお届けしていきます。
上高地の閉山から一週間が経ちましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。
我々は上高地の施設を全て閉め、およそ5ヶ月の越冬に備えて雪囲いなどの準備をし、松本市街に下りてきて冬の体制を整え……と、慌ただしい日々を送っておりました。
ちなみに雪囲いというのはこういうものです。
これは一昨年の12月の写真なのですが、雪から顔を出している黄色い部分が「雪囲い」です。
雪に押しつぶされて壊れたり歪んだりしてしまいそうな部分を、板などで覆います。
(ちなみにこの場所、左の屋根から滑り落ちた雪が向かいの壁にぶつかって、時々壁に大穴が開きます)
なんせ、上高地の冬はこんなですからね!
上高地の降水量は年間2,700mm程度、うち11月~4月の冬季(雪として降る分)は約1,000mm。
さらさらの軽い雪、しかも風が強くて飛ばされるため、積もる量はそれほどではない(川沿いでは1m前後)のですが、かなり降ります。
しかも最近、気温が上がって雪が融けやすいため、雪が氷に変わって雪害の破壊力が増す……なんていう困った事態も起こっています。
さて今回の上高地コラムでは、そんな上高地の冬について。
まず最重要事項ですが、11月16日から4月16日までの間、上高地の営業施設は基本的に休業しており、利用することができません。
上高地の入り口の釜トンネル。
元々ここから先はマイカー規制があり、バスやタクシーでのみ出入りができるのですが、冬期はそのバス・タクシーすらありません。
入ろうと思ったら手段は徒歩のみ。雪山登山となりますので、装備と経験のある方向けです。
上高地公式サイトにて注意事項が掲載されていますので、お越しの方はこちらを必ずお読みください。
厳しい季節ではあるのですが、お客さんがいない貴重な時期ということで、色々と工事をしていたりします。
こちらは11月17日の河童橋。ワイヤーの塗装中だそうです。
河川関係の工事はもともと、川の水量が減る冬期に行われることが多いらしいのですが
上高地内で見る橋のほとんどで竣工が11月になっているのは、この閉山時期も理由です。
雪に閉ざされてしまうまでの期間はそれほど長くないので、天候との闘いでもあります!
晴れた日の風景は非常に美しく、閉鎖されているのが勿体なく感じるほどです(とはいえ雪崩や地吹雪で非常に危険なので、決しておすすめはできませんが!)
この写真は大正池の下流部分。水が凍っていないのが分かるでしょうか?
上高地は湧き水が多い土地で、冬でも一定の温度(約6.5℃)で水が湧き続けています。
気温は―20℃程度にまで下がりますので、流れ下るうちに水の温度も下がっていくのですが、動いている水は凍りにくいため、梓川はしっかりと流れ続けています。
その恩恵を受けているのが、冬の上高地で暮らす生き物たち。
こげ茶色の鳥が2羽。カワガラスです。
川に潜って、水の中の虫や、時々魚を食べて暮らしています。
そしてこちらの写真には、動物の足跡が写っています。
前向きに揃った4本指と、横向きの指1本。ニホンザルです。
この足跡を見るたびに、「素手で雪の上を歩くなんて信じられない……」なんて思ってしまうのですが、彼らはそのうえ、川に入って虫を食べます。
……丸まってただの毛玉みたいになっていますが、サルです。
長く厳しい冬を、たくましく生き抜いています。
我々観光事業者にとってはシーズンが終わったばかりですが、上高地の時間は進み続けて、どんどん冬が深まっていきます。
このブログでも、時々は冬の様子をお届けできるかと思いますので、お楽しみに!
さくら
清水川は年間を通じて水温は約6℃。真冬でも凍らない…ビジターセンターの方に、そう教えていただいたことがあります。自然の営みは神秘的にすら感じます。それにしても、冬の上高地も美しいですね。
マシュマロ様
コメントありがとうございます。
周囲が雪で真っ白でも清水川は滔々と流れているので、見ていると不思議な気持ちになります。
そういう不思議さも、冬の上高地の魅力のひとつですね。
さくら
来春行きます❗
今から待ち遠しい
ラファエル様
コメントありがとうございます。
今年の冬がどんな冬になるのか、どんな春の訪れになるのか、まだまだ未知数ではありますが、きっと美しい景色を見られるはずです!
来年のお越しをお待ちしています。
さくら
閉山中の様子を伝えていただきありがとうございます
閉山は上高地の貴重な環境を守り、動物や人間の安全を守る大切な時間でもあると思います
開山中は訪れるすべての人に、かけがえのない沢山のものをあたえてくれる上高地なので、休息する、大切な眠りの時間、そっとしておく期間も必要だと思います
私たち人間だって休まないと死んでしまいますよね
冬季の内容を楽しみにしています
たま様
コメントありがとうございます。
仰る通り、上高地にとっても大切な期間ですね。
上高地のマガモは冬を経ると、人間から少し遠ざかるようになります。
そういう仕草を見ると、人が与える影響の大きさを実感します。
さくら
12月8日中の湯から河童橋までトレッキングを予定しています
足元は登山靴以外に何か必要でしょうか?今年は雪が少ないと聞いていますが、スノーシューとかアイゼンとか必要でしょうか?
ひき様
コメントありがとうございます。
11月29日時点で道には雪がないとのことでしたが、今週半ばは雪予報になっています。
また、出発時には雪が無かったとしても、突然の積雪の可能性はありますので、スノーシューかかんじきなど、雪の上を歩ける道具はお持ちください。
歩く範囲にもよりますが、上高地の平らな部分だけを歩くのであればアイゼンまでは必要ないかと思います。
どうぞお気をつけて、楽しんでいらしてください。
さくら
閉山中の様子の写真が素晴らしい。
これは高評価。
◆因みに上高地までどうやって閉山中はいけました?
○上高地まで連れてってくれる路線バスは運休とありましたが、どうやって写真のとこまで辿り着けたんでしょうか?
●平湯からの路線バスは走っていましたか?
自然版マシュマロなのか、芸備線の全面展望でいう水墨画のような感じなのか、なんとも言えない写真があまりにも素晴らしい!冬に是非行きたいものです。
コメントありがとうございます。
閉山期間中の上高地に入るのは冬山登山となります。本文中にもリンクを貼っていますが、こちらの[上高地公式サイト/冬期に入山される方へ]をお読みいただき、お越しになる場合には雪崩、地吹雪などの危険に対する備えを十分にしたうえで入山してください。
冬季は、上高地へのバスはありません。
徒歩で上高地に入山する場合の最寄りのバス停は「中の湯」で、高山・新穂高-松本間にある停留所です。路線は[こちらのリンク]をご覧ください。なお、季節によって時刻表は変わりますので、お越しの際には必ずバス会社のページで最新情報をご確認ください。
はじめまして。
11月24日火曜日に高山の方から上高地に行こうと思っています。ですが調べていたところ15日で閉山と掲載してありました。軽いハイキングをしたいと思っていたのですが、閉山の場合は上高地に行くことも厳しいでしょうか?もし行くことは可能であれば、ハイキングは出来るのでしょうか?色々調べていましたが、よく分からなくてご連絡させて頂きました。
umino様
コメントありがとうございます。
冬季の上高地は、バス・タクシーやホテル・食堂・売店等を含めた全ての施設が休業しております。遊歩道も常時整備されているわけではなく、地吹雪や凍結の危険も高いため、ちょっとしたハイキング程度のご希望であればおすすめしません。来年4月17日の営業再開をお待ちください。
冬山登山の装備と知識をお持ちで入山される場合には、[こちらのページ]をお読みいただき、登山届や登山保険をご用意ください。松本−高山間の「中の湯」バス停から、釜トンネル内を歩いての入山が可能です(通常照明を消していますので、懐中電灯などが必要です)。
お越しになる場合には、十分に安全にご注意ください。