大晦日の更新となりました。
こんにちは。さくらです。
上高地では11月15日の閉山が大きな区切りになっており、「今年もありがとうございました」というご挨拶も一度その辺りで出し尽くしてしまうため、年の瀬の感慨はちょっと薄めのような気もするのですが……
とはいえ一年の区切りなのは間違いないところです。
今年も一年、誠にありがとうございました。
来年はより多くの方に上高地へお越しいただける世の中になることを祈りつつ、皆様にお会いできますことを楽しみにお待ちしております。
さて、2021年最後の上高地コラムは、「Discover Kamikochi~上高地を学ぶ~」講習会の過去回より抜粋してのお届けです。
主人公はこちら。
この写真だけで鳥の種類がわかった方はなかなかの通です。
もっとも、ブログタイトルで察した方もいらっしゃるかもしれません。
そう、春を告げる鳥、ウグイスです。
【上高地のウグイス】
ウグイスは上高地で最も数が多いのではないかとも言われている鳥で、もちろん上高地以外でも日本全国あらゆる場所で声を聞きますね。
それだけありふれているのに、見つけると嬉しい鳥でもあります。
なぜかと言えば、ウグイスはなかなか姿を見せてくれないから。
笹藪の中を棲家にしていて色も目立ちにくいため、「声はすれども姿は見えず」の代表格のような鳥です。
しかし上高地ではなんせ数が多いですから、根気さえあればそれほど見つけるのは難しくありません。
初心者がちょっと気合いを入れてバードウォッチングをしたい時、目標として程よい難易度です。
【ウグイスの見つけ方】
①季節
まず一番大切なことは、季節を選ぶことです!
ウグイスは声を頼りに探すのが一番話が早いので、「ほーほけきょ」と鳴いてくれる季節が良いです。
上高地では、人が入れるようになる4月中旬から、8月の頭くらいまで。
あまり葉っぱが生い茂ってしまうと見通しが悪くなるので、5月いっぱいくらいだとより見やすくなります。
梅雨に入った頃からは、見つけるのに必要な根気が倍くらいになる気がしますが……それでもまぁ、元気に鳴いてはいますので難しくはありません。
②場所
ウグイスがいるのは、ササが生い茂っているような場所です。
とは言ってもササは上高地中どこにでもありますし、ウグイスもどこにでもいますので、それほど場所を選んで探す必要はありません。
木漏れ日が差すようなちょっと明るめの林に多いような気がしますが、そういう場所を探すよりも、適当に歩きながら「ほーほけきょ」の声を探す方が手っ取り早いです。
河童橋の近くだと、小梨平キャンプ場のあたりが見つけやすいと思います。
ウグイスのオスが直径200m程度の縄張りを持っていて、キャンプ場の中にもいくつか縄張りがあるようです。(上高地ビジターセンターの裏手のあたりは特に見やすく、春はガイドウォーク中に我々もよく立ち寄ります)
③探す
「ほーほけきょ」が聞こえてきたら、姿を探してみましょう。
まず声で「だいたいこの辺にいるような気がする……」というところまで来たら、あまり一点を見たりきょろきょろしたりせずに、ぼんやり全体を眺めてください。
風景の中で動くものは見つけやすいので、ウグイスが移動する瞬間や、さえずる時の体のふるえなどが目に入ると場所がわかります。
ポイントは、あまり高いところを見ないこと。
上高地のササの背丈は1mくらいですが、だいたいその高さ~人間の目の高さよりちょっと上くらいまでがよくいる高さです。
季節が進んでくると徐々に高さが上がって見上げることも増えてきますが、「基本の活動場所はササの中、さえずる時はアピールのためにそこからちょっと高いところに出てくる」くらいの感じが基本です。
なおササの中にいる時はまず見えないので(ササがガサガサ動くのは分かります)、出てくるのを待ちます。
ちなみにウグイス、体のサイズ(スズメくらい)の割に声がめちゃくちゃ大きいです。
そのため実際よりも近くで聞こえているように錯覚しがちで、ガイドウォーク中もお客様から「あんなに遠くにいるとは思いませんでした」と言われることがしばしば。
これくらいの音量ならこれくらいの距離かな……とあたりをつけるのは完全に慣れの問題なのでちょっと説明が難しいのですが、「かなり声が大きい鳥だ」ということは頭の片隅に置いておくと良いかもしれません。
双眼鏡はあってもなくても良いです。
ウグイスは比較的低いところにいる鳥なので、肉眼でも十分見える範囲ですし。
ただ、やはり双眼鏡でくっきり見えると感動もひとしおなので、ちょっと扱いには慣れがいりますが、あって損なものではないです。
宿泊施設で貸し出しがある場合もありますので、機会があれば使ってみてください。倍率は8倍くらいが使いやすいと思います。
【ウグイスの生活】
ウグイスを見つけたいだけならここまで読んで頂ければ大丈夫。ここから先は解説コーナーです。
まずは、ウグイスが鳴く季節について。
ウグイスの「ほーほけきょ」は、オスだけが鳴く「さえずり」と呼ばれる鳴き方で、メスに対する求愛と、他のオスに対するなわばり宣言の意味を持ちます。
恋が成就する→子育てをする、というスケジュールのためには、子育てに適した時期(餌になる虫が多い時期=夏)のちょっと前に求愛をしなければなりません。
というわけで、ウグイスに限らず鳥が一番さえずるのは春~初夏にかけて、上高地でいうと5~7月くらいです。
ウグイスもおおかたはそのスケジュールではあるのですが、他の鳥に比べるとさえずる時期がかなり長いです。
他の鳥がすっかりさえずらなくなった8月になっても声が聞こえてきて、だいたいお盆の頃までは鳴いています。
じつはウグイスは、一夫多妻制の鳥。
9割以上の鳥は一夫一妻だそうなので、かなり少数派です。
オスのアピールも、メス一羽とカップルになれば終わりというわけではなく、多いと5~6羽ほどの奥さんを持つそうなので、その分長くなるんですね。
またメスの方も、天敵に襲われるなどして一度目の繁殖に失敗した場合、もう一度チャレンジ、ということもあります。
ウグイスの世界では、子育てをするのはメスだけです。
まぁあれだけ四六時中大声を出していたら天敵にすぐ見つかってしまうでしょうし、そのリスクをオスが一手に背負っていると考えると頷ける役割分担かもしれません。
ちなみにウグイスの鳴き方には「キョキョキョ、ケキョケキョケキョケキョ……」と長く鳴く警戒音(いわゆる谷渡り)もありまして、こちらもオス専用の鳴き声です。
ウグイスは後天的に鳴き方を覚えていく鳥なので、近くで鳴いている父親の声が一番のお手本になります(ちなみにウグイスの鳴き方には方言があるそうです)。
そうやって安全確保や教育に一役買っていると考えると、「オスは子育てをしない」という言い方はちょっと言い過ぎかなとも思うのですが、ただ餌を運ぶのは専らメスの役割。
多くの鳥では夫婦でする子育てをメス一羽でやろうというのですから、よっぽど虫取り上手でないと務まりません。
ウグイスの巣はササの中なので虫を運ぶ様子を見ることはまずありませんが、きっとせわしなく動き回っているはずです。
今回のお話は、2018年度の講習会「上高地の鳥と動物」ステップアップ講習より一部抜粋でした。
知れば知るほど広がる自然の世界を、ぜひじっくりお楽しみください。
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さくら